今回はFXなどでたまに話題になるトラリピ系のトレード手法の優位性を検証、考察してみます。

この手の手法は各FX業者によって色々な名前が付けられています(トラリピ、ループイフダン、iサイクル注文など)。

手法を総称してリピート系のトレード手法と言うこともあります。

タイトルにも書いたとおり、結果としてはそれ単体では儲からないことがわかりました。

トラリピ系のトレード手法とは?

トラリピ系のトレード手法とは、決められた値幅間隔で買い、決められた値幅間隔で売るという至極単純なものです。

例えばドル円を一円刻みで買っていき、一円刻みで利確していきます。

  • 100円で購入、101円で指値売り
  • 99円で購入、100円で指値売り
  • もし100円で利確されたら、再び99円で購入、100円で指値売り

これにより、相場が長期的に横ばいで上下だけする状況下において利確をこまめに繰り返すことができ、結果利益を蓄積することができると言われています。

ただしこの手法の恐ろしいところは、値段が一方的に下がり続けた場合はひたすらポジションが積み上がり、含み損が増えていくことです。

そもそもが含み損を抱える前提の手法なので、ロスカットされないほどの余裕のある資金が必要となります。

トラリピ系手法は儲かるのか検証

トラリピ系手法は儲かるのでしょうか。MT4を使ってバックテストで検証してみました。

条件は10万ドル(約1100万円)スタート、ドル円を25銭刻みで1000通貨(0.01lot)ずつ購入(ロング)し、25銭上げたら利確、損切りは一切しません。

2007年7月1日~2015年7月1日までの8年を検証期間とし、その間にどれだけのドローダウンと損益が発生したのかを測定してみます。

期間内には、ドル円はだいたい123円から76円近くまで下落し、再び123円の位置まで戻っています。

もしトラリピ系の手法の期待値がプラマイゼロであれば、ドル円のチャートと損益曲線は同じような線を描くでしょうし、期待値がプラスであれば増え、マイナスであれば減るはずです。

損切りを一切しないので緑の線が本来のパフォーマンスです。

結果は検証期間のドル円チャートの動きと比べると増えており、トラリピ系の手法は一見有効に見えます。

ただし私が使っている業者では米ドルの買いスワップポイント(簡単に説明すると保有しているだけで得られる金利)がもらえるため、こちらのバックテスト結果にはスワップポイント分のプラスが含まれています。

まず、それをふまえて運用結果を見ると、スワップポイントを含め、かつ税金を考慮しない状態で年利3.6%程度の利回りとなっており、正直レバレッジをかけて40%のドローダウン分のリスクを取っている割にはあまり儲からない印象があります。

また試しにドル円の同じ期間で逆のポジション(売り、ショート)で検証してみたところ、今度はマイナスのスワップポイントに押しつぶされて損益がマイナスになってしまいました。

長期運用では、スワップポイントによる影響が大きくなることがわかります。

EURGBPでのトラリピ検証

次に金利差がわりと少なく、私の使っている業者では買いと売りでスワップポイントがあまり付かないEURGBPの通貨ペアでバックテストしてみると、同じ期間で買いでも売りでも損益がプラスになる状況が存在しました。

よって、今度こそスワップポイントを抜きにしたトラリピ系のトレード手法は期待値がある…と安易に結論付けたくなりますが、実はこれには罠があります

仮に価格が完全にランダムウォーク(ランダムに動く事)すると仮定した場合、価格が元の場所に戻ってくるという保証がどこにもないのです。

ランダムウォークよりも価格が横ばいになるか検証

トラリピ系の手法は、価格が横ばいになった時に収益が最も上がります。

よって「完全なランダムウォークと比べて実際の為替相場は横ばいになることが多い」という証明ができなければ、優位性が認められたとは言えません。

これを証明するために、

  • ドル円が5円動くまでに50銭の値幅で11往復以上する可能性が高い
  • ドル円が10円動くまでに1円の値幅で11往復以上する可能性が高い

といった仮説を立てて検証してみます。

そこで、

  • ドル円を1円刻みで仕掛けと利確、損切り幅を2円、5円、10円と変更してパフォーマンス測定
  • ドル円の損切り幅を5円に固定し、仕掛けと利確幅を2円、1円、50銭と変更してパフォーマンス測定

これらのパフォーマンスを比較してみることにしました。

価格が横ばいになる傾向が強いと仮定した場合、損切り幅が大きくなればなるほど、また利確幅が狭くなれば狭くなるほどパフォーマンスが上がるはずです。

検証してみた結果は、損切り幅を広げれば広げるほどパフォーマンスは増加(これは間違いなくスワップポイントのせい)、利確幅を狭めれば狭めるほどパフォーマンスは減少(日を跨がずに利確されることが多いから?)となり、結果として優位性のようなものは確認できませんでした。

よって私としては、トラリピ系手法単体ではランダムウォークに打ち勝つことができず、長期的な優位性はないと判断します。

たまたま価格が横ばいになればトラリピ手法で利益を上げることができますが、買った方向と逆にいけば損します。10年以上も下落しているトルコリラで、買いのトラリピをしてたら今頃悲鳴を上げてるはずです。

要するに、ただ単にトラリピ系手法を実践して放置するのではなく、ファンダメンタルズ分析をきちんとした上で、価格がしばらくは横ばいになるなどのプラスアルファの読みが必要になります。

トラリピ系手法の弱点

続いてトラリピ系のトレード手法の弱点について考えてみます。

基本的にトラリピ系手法はスワップポイントを貰える通貨ペアでやる方が良いのですが、スワップポイントは国の経済状況により変動し、ときには逆転することさえあります

含み損のポジションを大量に抱えた状態でスワップポイントが逆転し、それが長期化しそうであれば、損切りを覚悟しなければいけないかもしれません。

また上記で説明したランダムウォークに共通する部分ですが、トラリピ系手法はあくまで取引する2つの通貨の価値がそれなりに保たれているという前提で作られた理論であり、実際のところは机上の空論であると言えます。

例えば明日アメリカが壊滅し、突然1ドルが10円になる可能性は0ではありません。ドル円は1ドル300円の時代もありました。

以上のことからトラリピ系手法は一見単純な手法で期待値がありそうに思えますが、実際のところは期待値があるとは思えず、長期運用におけるリスクもそれなりに高いと言えます。

両建て運用は有効なのか

トラリピ系手法で両建て(買いと売りを同時に行う)をして値動きをヘッジすることは有効なのでしょうか。

これに関しては、はっきりと有効ではないと結論づけます。

なぜなら基本的に両建てをすると、マイナススワップの方が大きく、更にマイナススワップが発生する側で一定数以上のポジションを抱えてしまうと、売買差益で得られる利益では賄えないほどのマイナスのスワップポイントに押しつぶされてしまう可能性があるからです。

それに上記でも検証した通り、為替の価格は横ばいに近いという法則も確認できませんでした。

やはりトラリピ系手法を実践する際は、プラスのスワップポイントとファンダメンタルズの読みを併せたトータルな運用計画を考えるべきです。

損切りは行うべきか

トラリピ系手法は、全く損切りをしなければその分スワップポイントを多くもらえるためパフォーマンスが上がります。

ただしその分リスクは高まるため一長一短です。

基本的にリスク許容度というよりは、ファンダメンタルズ的に価格が戻る見込みがあるかないかで損切りの判断をすべきです。

ただ手法を実践するのではなく、ちゃんと経済ニュースを読むことをおすすめします。

元手はどれくらい用意すれば良いのか

トラリピ系手法は、基本的に破産したらすべてが水の泡です。よって元手は余裕を持っておかなければなりません。

例えばドル円を2008年から見た場合、上は123円、下は75円までの値動きが起こりました。上で行った検証では、10万USD(約1100万)の資金を用意し、25銭刻みで1000通貨(0.01lot)ずつ仕掛け、全く損切りしない状態で約43%のドローダウンが出ました。

正直どこまで上がるか、下がるかなんてわからない状況でこれ以上のリスクを取るのは危険だと言えます。

これをベースに考えると、

  • 25銭刻みであれば1100万円以上の元手が必要
  • 50銭刻みであれば550万円以上の元手が必要
  • 1円刻みであれば225万円以上の元手が必要
  • 2円刻みであれば112万円以上の元手が必要
  • 4円刻みであれば56万円以上の元手が必要

となります。

もちろん、ファンダメンタルズ分析により、価格幅を絞れるのであればもう少しリスクは取れるかもしれません。

結論

トラリピ系手法は、私が行った検証では優位性があるとは言えず、以下の要素を加えてプラスアルファの戦略を練る必要があります。

  • プラスのスワップポイントが発生する通貨ペアと方向で行う
  • ファンダメンタルズ分析でしばらく価格が安定しそうかを確認する
  • 十分な資金管理

トラリピ系手法は、単に実行すれば儲かるといった甘い手法ではないことだけはご注意ください。

トラリピ系の手法が使えるFX業者

トラリピ系の手法は、MT4でEAを自作して実践するのが最も自由度が高くなりますが、少々ハードルが高いので、サービスとして提供している国内FX業者を紹介しておきます。

各自自己責任で実践ください。