風説の流布を仕掛ける悪人

当記事では、風説の流布の意味、どこからが風説の流布にあたるのか、そして風説の流布をして価格を人為的に吊り上げ、売り抜ける詐欺の手口などについて解説します。

風説の流布とは?

風説の流布(ふうせつのるふ)とは、証券用語で「嘘の情報を広め、相場を人為的に動かそうとする行為」を指します。「風説」は噂という意味であり、「流布」は広めるという意味です。

風説の流布がされる多くの事例は、安く買った株や仮想通貨などを、より高い値段で売るために、嘘のポジティブニュースを流して価格を吊り上げることです。

もしくは株や仮想通貨を発行している本人(企業)が、自社の株価を吊り上げるために嘘の情報を流すこともあります。

また、他社の株価を下げるために嘘のネガティブニュースを流す行為も見られ、これも風説の流布にあたります。

どこからが風説の流布にあたるのか?

風説の流布は、銘柄に関するデタラメで嘘の情報を広め、価格を操作しようとする行為を指します。

基本的にネット上で「事実に基づくニュース」を書き込んだり、個人的な「上げ下げの予想」を書き込む場合は、風説の流布にはあたりません。

その銘柄に関する嘘の情報を流すかどうかが問題になります。

風説の流布を英語で言うと?

風説の流布を英語で言うと、Pump and Dumpと言います。

日本語の風説の流布とは、少し意味合いが違うので別記事にて解説します。

風説の流布を利用した詐欺手口

風説の流布により価格を吊り上げ、利益を出す詐欺手口(パンプ&ダンプ)は、主にスパムメール、メディアを通じた偽のプレスリリース公開、Twitter、Telegram、DiscordなどのSNS、インターネット掲示板、もしくは古典的なテレマーケティングを使った営業を通じて行われます。

詐欺師は、「直近のインサイダー情報を持っている」「あなただけに教える」といった主張をした上で、目的の銘柄を勧めます。

具体的には、「○○に大口の仕手集団による仕手が入る」「明日○○が暴騰するという情報が入ってきた」「○○の仮想通貨が近々大手取引所に上場する」「○○が大手企業と提携したようだ」といった類の嘘のポジティブニュースを流します。

もし仕掛けが成功すれば、投資家が目的の株や仮想通貨を買うことで値上がりが見込めます。

また目的の株や仮想通貨の買い需要が増え、価格や出来高が上昇してくれば、他の投資家をも惹きつける事に繋がり、更なる値上がりを見込めるかもしれません。

詐欺師は、株や仮想通貨が値上がりしたのを見て、資産を売却して利益を確定させます。そうすると、多くの投資家は買った値段よりも価格が下がってしまい、損失を被ります。

パンプ&ダンプを行う詐欺師は、東証一部といった大企業の市場ではなく、新興市場のボロ株や、マイナーな仮想通貨を使って行います。

なぜならこうしたものは、出回る情報の量も少ないため、簡単に情報操作することが可能だからです。

スパムメールによるパンプ&ダンプ

海外ではスパムメールによるパンプ&ダンプが非常に多いようです。

米国パデュー大学のLaura Frieder教授によると、2004年1月~2005年7月までに送信された75000件のスパムメールを調査した結果、スパマーは平均で4.9%~6%の収益を上げることができ、株を買った人は2日以内に平均で5.25%~7%の損失を被ったようです。

また、2006年時点では毎週およそ7億3000通のスパムメールが送信されており、そのうちの15%が株の風説の流布だったようです。

Böhme氏とHolz氏による論文でも似た結論が出ています。

スパムメールでパンプ&ダンプに利用された株は、ほぼすべてがボロ株で、大きな証券取引所で取引されておらず、出来高が少なく、空売りができないものでした。

スパマーは株を先に買っておき、メールをばら撒いたその日に売り抜けます。

仮想通貨におけるパンプ&ダンプ

ウォールストリートジャーナルの調べによると、過去6ヶ月において、175もの別々の「パンプ&ダンプスキーム」が、121個の仮想通貨を取引したとされています。その取引額は少なくとも900億円にも登るとされています。

こうしたグループは、TelegramやDiscordといったチャットグループによく作られており、グループの管理者だけが、いつ、何の仮想通貨をPump(値上がり)させるかを知っている状況になっています。

そして、管理者がグループ内にPumpする銘柄を公表した瞬間に、グループの参加者は我先にと買おうとします。

管理者は銘柄を公表する前に予め買っているため、アナウンス後に飛びつく人がいる限り利益を出すことができます。

パンプ&ダンプは、当然ながら株でも見受けられます。しかし株の場合は、証券口座を開設する際にKYC登録(身分証などの提示)を求められるため、下手すると足がついてしまいます。

その分仮想通貨の場合は、いくつかの取引所では匿名で口座を持つことができるため、容易に相場操縦ができてしまいます。

風説の流布の見抜き方

インターネット上で情報収集をしていると、風説の流布とみられる嘘情報をよく見かけます。

出回っているものが嘘かどうかを見抜く方法としては、

  • 公式サイト、公式アカウントにて同じ情報が発信されているかを確認すること
  • 噂レベルの情報を信用しないこと
  • SNSや掲示板などで、その情報に対して検証及び議論がされているかをチェックすること
  • 買い急がないこと、焦らないこと

このあたりが重要かと思われます。

もし個人から「インサイダー情報を教える」といった話が来た場合は、ほぼ間違いなくインサイダー情報ではありません。

また話を自分に伝えた人は、自分よりも先にその銘柄を買っていることが予想されます。

風説の流布の条文と罰則

日本においては、風説の流布の条文は、金融商品取引法の第158条にて定められています。

第百五十八条
何人も、有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくはデリバティブ取引等のため、又は有価証券等の相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない。

風説の流布の規定に違反すると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金刑が課されます。

法人等の代表者や使用人、その他従業員が、その法人の業務又は財産に関し、当該行為違反を行うと、7億円以下の罰金刑が課されます。

風説の流布にはくれぐれもご注意ください。